予防検診は、本当に人を長生きさせているのか― 乳がん検診と過剰診断をめぐる不都合な真実 ―
以前の記事で、「症状がないなら病人ではない」とお伝えしました。
「症状がないなら病人ではない」という、忘れ去られた真実 ―― 診断が奪う心の平和について
これと同じようなことを、ジュネーブ大学のジョヴァンニ・フリゾーニ教授(臨床神経科学)も言っています。
フリゾーニ氏は「患者にとって本当に重要なのは疾患(disease)ではなく病い(illness)だ」と言い、この2つの段階を明確に区別することが重要だと指摘する。
疾患は医学的な診断を受けて明らかになるもので、病いは本人が感じる主観的な体験です。このような考え方は、日本よりも欧米のほうが進んでいるようです。
今回は、この考え方を踏まえたうえで、乳がん検診における「過剰診断」という問題を考えてみたいと思います。
予防検診は本当に死亡率を下げるのか ― 論文レビューから見えること
乳がん検診によって、乳がんの死亡を減らすという研究がある一方で、その真逆の報告もあります。
少し古い2012年のコクラン・レビューも早期発見による死亡率低下は限定的で、かつ重大な害をもたらすと報告している。
コクラン・レビューは論文に基づく医学データの系統的な分析結果をまとめたもので、科学者や医師からなる非営利国際組織コクランが発行している。
引用されている最も信頼性の高い臨床試験では、マンモグラフィー(乳房X線検査)を13年間継続した結果、乳がん死亡率に有意な減少がみられなかった。
乳がん検診は、症状が出る前に早期の病変を見つけ、乳がんで亡くなるリスクを減らすことを目的に行われています。日本のガイドラインでも40歳から定期的なマンモグラフィ検診が推奨されています。
日本のガイドラインには、「マンモグラフィで乳がんで亡くなる人を減らすことができる」と書かれていますが、「予防検診は本当に死亡率を下げる?」の記事でも、以下の記事でも「マンモグラフィ検診は乳がんで亡くなる人を減らさない」とのことです。
乳がん検診に限らず、がん検診では以前から過剰診断による不必要な不安や治療による害、経済的負担や休職・失職による経済的困難が指摘されています。その上、乳がんによる死亡(乳がん特異的死亡率)を減らさないのだとしたらどうでしょう?
さらに、乳がんのスクリーニングと早期治療が、寿命(全死因死亡)を延ばすのかというと、実ははっきりと証明されていません。
乳がん特異的死亡率が下がる理由
スクリーニングで「本来なら一生症状を出さない乳がん(DCISや低悪性度)」が大量に見つかります。それらを「がん」として治療すると、結果として「乳がんで死ななかった人」が増えます。
これは、治療が命を救ったというより、もともと死ななかった人を救ったことにしている可能性を常に含みます。
- 過剰診断
- リードタイムバイアス:早く見つけただけで、寿命が延びたように見えてしまう。
- 長さバイアス:進行の遅い、予後の良いがんほど検診で見つかりやすい。
これらが重なることで、統計上は「乳がん死亡率が下がった」ように見えます。
では全死因死亡(寿命)は?
多くの研究では、全死因死亡に有意差はないか、差があったとしても極めて小さく、統計的に不安定です。
結論としては、「 がん死と診断される人は減る一方で、寿命(全死因死亡)は延びていない、あるいは差が確認できていない。 」と言えます。
このような状況では、積極的にスクリーニングで発見するよりも、病変が見つかったときに、個々の人の意思で治療をするかしないか判断するのが良いと思います。この方向性は、過剰診断・過剰治療が問題になっている界隈では、国際的にも正当性があると考えられています。
全体スクリーニングの「構造的な害」
1. 過剰診断は避けられない
スクリーニングの感度を上げるほど、進行しない、生命予後に影響しない、本人が一生気づかずに終わる病変を必ず拾ってしまいます。
2. 見つかった瞬間に「治療圧」が発生する
理屈では「経過観察」という選択肢があっても、「がん」という言葉、医療者側の責任回避、家族・社会の同調圧力によって、実質的に"治療せざるを得ない状況"が作られます。
3. 集団利益と個人不利益のズレ
全体では乳がん死亡が少し減る一方、個人では不要な手術、放射線・ホルモン治療、生活の質の低下、「がん患者」というレッテルを受ける人が確実に出ます。
両側乳房切除の問題
集団スクリーニングの害の延長線上にある問題として、病変のない方の乳腺を手術するというのは問題なのではないか? 両側乳房切除はやりすぎなのでは? という疑問が浮かびます。
大前提として、病変のないほうの乳房は、病気ではありません。両側乳房切除は、治療ではなくて予防です。
JAMA Oncologyに掲載された「両側乳房切除と生存率の関係に関する大規模コホート解析(両側乳房切除と乳がん死亡率)」によると、2000年から2019年にかけて乳がんと診断された66万人以上の女性を対象にした大規模コホート解析が行われました。
その結果、両側乳房切除術を受けても、集団レベルでは生存率(寿命)の改善は認められなかったと報告されています。
この研究結果については専門家の間でも意見が分かれているようですが、病変のない乳房まで切除するという選択が、生存という観点から利益をもたらさなかったという事実は、女性にとって極めて重要な情報ではないでしょうか。
論文:Bilateral Mastectomy and Breast Cancer Mortality
一般向け解説:A double mastectomy to beat breast cancer will not improve chances of survival, study reveals
治療関連死と乳がん死亡の関係
さらに突っ込んで検討すると、スクリーニング群では早期発見により、非スクリーニング群と比べて抗がん剤や放射線治療といった強力な治療を受ける割合が減る可能性があります。
つまり、非スクリーニング群では進行した状態で発見されるため、より侵襲的な治療が行われる割合が高くなります。その結果、「治療関連死」が「乳がん死亡」に含まれる場合、非スクリーニング群の乳がん死亡数がより多く計上される可能性があります。これは実際に議論されてきた論点でもあります。
「スクリーニングで乳がん死亡が減った」という観察結果には、リードタイムバイアス以外にも、治療構成の変化による"見かけ上の死亡減少"が混ざっている可能性は十分にあるのです。
実際、治療関連死はゼロではありません。抗がん剤や放射線治療、大手術による合併症が「乳がん関連死」に含まれることはあります。
「乳がん関連死」という指標は、医者の裁量に任されていますし、がん保険を受けやすいように「癌死」にされることもありますから、客観的な指標ではありません。
言い換えれば、非スクリーニング群で治療関連死が「乳がん死」として計上された分だけ見かけ上の差が生じているだけで、真の乳がんによる死亡には差がない可能性もあります。
ですから、最終的な評価指標としては、全死因死亡を重視せざるを得ません。
では、なぜ全死因死亡は変わらないのでしょうか?
なぜ全死因死亡が変わらないのか
スクリーニングにより命が救われているなら全死因死亡が下がるはずですが下がらないのであれば、他の死因が増えている可能性が考えられます。
検診を受け続けるストレス、要精査や生検、経過観察の繰り返し、「がん患者」という自己認識の変化により、個人レベルでは判定できなくても、集団レベルでは無視できない影響があるのかもしれません。
その結果、「乳がん死」が減少しても、心疾患などのその他の死因が増えて、全死因死亡が変化しないと考えられます。
「がん」と診断されたらどうしたら良いのか。
では、もし実際に「がん」と診断された場合、私たちはどのように考え、行動すればよいのでしょうか。
そもそも、「がん」とは何か、私たちは正しく教えられていません。
「がん」が何かわからないまま、多くの人が健康情報を調べ、予防や治療を模索しています。
ここから先は、私自身が「これこそが答えだ」と思っていることですが、RAPTブログでは、「がん」の正体について明確な答えが書いてあります。
以下の記事、動画をご覧になり、ご自身で何が真実かご判断していただければと思います。